人生の転機は、時に予期せぬ形でやってきます。私の場合、それは銀行員を定年退職した後のことでした。

37年間、銀行の仕事一筋で歩んできた私が、退職後に選んだ道は花屋オーナーという、全く異なる世界への挑戦です。妻と二人、新天地の鎌倉で始めた「サクラブルーム」は、今や地元で愛される花屋となりました。

なぜ、銀行員から花屋オーナーへ?その答えは、趣味で始めた園芸への情熱が、いつしか新たな人生の目標へと変わっていったことにあります。

退職後の人生をどう生きるか。多くの方が一度は考える問題ですが、私は花を通じて、心豊かな日々を送ることができていると実感しています。

この記事では、私の銀行員時代の経験や学び、退職後の新たな人生設計、そして花屋オーナーとしての挑戦と喜びについてお話しします。そして最後に、花を通じて得た、人生の教訓をシェアしたいと思います。

銀行員時代の経験と学び

銀行業務で培ったスキルと知識

東京大学経済学部を卒業し、大手銀行に就職してから37年。私は銀行員として、様々な経験を積み重ねてきました。

銀行業務で培ったスキルと知識は、以下のようなものが挙げられます。

  • 金融商品や経済動向に関する専門知識
  • 顧客対応力とコミュニケーション能力
  • リスク管理と問題解決能力
  • リーダーシップとマネジメント力

特に支店長として10年以上務めた経験は、組織をまとめ、目標達成に導く力を鍛えてくれました。これらのスキルは、花屋経営でも大いに役立っています。

趣味としての園芸への情熱の芽生え

銀行員時代の私は、仕事一筋の几帳面で真面目な性格でしたが、プライベートでは趣味の園芸に没頭していました。

休日には、自宅の庭や畑で、四季折々の花や野菜を育てることが何よりの楽しみでした。土に触れ、植物の生長を見守る喜びは、ストレスの多い銀行員生活のオアシスとなっていたのです。

妻もまた、私の趣味を理解し、共に楽しんでくれました。「いつかは、夫婦で小さな花屋を営めたら」そんな何気ない会話を交わすこともありましたが、当時はまだ、遠い夢物語のように感じていました。

しかし、趣味で学んだ園芸の知識は、私の中で確実に蓄積されていったのです。

退職後の新たな人生設計

妻との鎌倉への移住

定年退職が近づくにつれ、これからの人生をどう生きるか、妻とよく話し合うようになりました。子育ても一段落し、二人の時間を大切にしたい。そんな思いが、移住のアイデアへと結びついていったのです。

移住先として選んだのは、古都鎌倉。豊かな自然と歴史、そして都心からのアクセスの良さが決め手となりました。鎌倉なら、園芸を楽しみながら、小さな花屋を営むという夢を叶えられるかもしれない。私たち夫婦は、そう直感したのです。

花屋オープンへの決意

鎌倉への移住が決まってから、私たちは花屋オープンに向けて本格的に動き出しました。まずは、店舗物件探しや開業資金の準備。そして、園芸の知識を基礎に、切り花やアレンジメントの技術を学ぶため、フラワーアレンジメントの教室に通い始めたのです。

妻も、花屋の運営に欠かせない経理や接客の勉強に励みました。二人三脚で、着実に夢への一歩を刻んでいったのです。そして、退職から半年後の春、「サクラブルーム」はついにオープンを迎えました。

不安もありましたが、「お客様に喜んでいただける品質のお花を提供したい」という思いを胸に、私たちは新たな人生の一歩を踏み出したのです。

花屋オーナーとしての挑戦

花の栽培とアレンジメントの技術習得

花屋オーナーとして成功するには、品質の良い花を仕入れ、美しくアレンジする技術が欠かせません。私は、以下の3つを重点的に学びました。

  1. 切り花の品質管理と保存方法
  2. フラワーアレンジメントの基本技術
  3. 季節や用途に合わせたデザイン

中でも難しかったのが、アレンジメント。バランスの取り方や色の組み合わせなど、奥の深い世界でした。教室での学びに加え、自宅での練習や、他店の作品研究も欠かしませんでした。

努力の甲斐あって、今では「サクラブルーム」のアレンジメントは、お客様から好評をいただけるようになりました。私にとって、花に込めた思いが伝わるのは何よりの喜びです。

お客様との交流と花を通じた喜びの共有

花屋の仕事は、単にお花を販売するだけではありません。大切なのは、お客様との信頼関係を築き、花を通じて喜びを共有することです。

お客様の中には、花選びに悩む方も多くいらっしゃいます。そんな時は、以下のようなポイントを押さえて、丁寧にアドバイスするようにしています。

  • お客様の用途や予算、好みを汲み取る
  • 季節や流行を取り入れた提案をする
  • 花の特性や管理方法もお伝えする

お客様の笑顔が、私たちの何よりのやりがいです。花屋を通じて、人生の節目を彩るお手伝いができること。それが、この仕事の醍醐味だと感じています。

花を通じて得た人生の教訓

花から学ぶ生命力と美しさ

花屋の仕事を通じて、私は花から多くの教訓を得ました。その一つが、生命力と美しさです。

花は、どんな環境でも、懸命に生きようとする強さを持っています。例えば、アスファルトの隙間から顔を出す一輪の花。その逞しさには、いつも心を打たれます。

また、花はその短い生涯で、最高の美しさを咲かせます。儚くも、生命の輝きに満ちたその姿は、人生の本質を物語っているようです。

花から学んだ生命力と美しさ。それは、どんな状況でも希望を持ち、今を精一杯生きることの大切さでした。

人生の変化を受け入れる柔軟性

花屋への転身は、私にとって大きな変化でした。しかし、花を通じて得た教訓のおかげで、その変化を柔軟に受け入れることができたと思います。

花は、季節の移ろいの中で、その姿を変えていきます。春の訪れとともに芽吹き、夏の日差しを浴びて成長し、秋には実を結び、冬を越えて、また新たな命を育む。

変化を恐れず、むしろ、それを糧にして美しく生きる。花から教わったその柔軟性は、人生の転機を迎えた私の心に、勇気と希望を与えてくれました。

まとめ

銀行員から花屋オーナーへ。37年間の銀行員生活を経て、私が選んだのは、妻とともに古都鎌倉で花屋を営む道でした。

定年退職後の人生をどう生きるか。それは、多くの方が直面する人生の岐路です。私の経験が示すのは、趣味や情熱を大切にし、変化を恐れず、新たな可能性に挑戦することの意義です。

花から学んだ生命力と美しさ、そして変化を受け入れる柔軟性。それらは、人生の指針となる普遍的な教訓だと感じています。

「サクラブルーム」を通じて、お客様の人生に寄り添い、花の魅力を伝えていくこと。それが、私たち夫婦の新たな人生の目標です。

「人生に終わりはない。変化を楽しみ、成長し続けること。それが、充実した人生を送る秘訣だ」

私はそう信じて、今日も花屋に立っています。人生100年時代を生きる皆さんにとって、私の経験が新たな一歩を踏み出す勇気となれば幸いです。

この記事を通じて、「変化を受け入れ、学び続ける」人生を歩むヒントを感じていただけたなら嬉しく思います。読んでいただき、ありがとうございました。